「ご主人は絶対バレないだろうね」
「旦那には内緒だから……そっちこそ奥さん大丈夫?」
「もちろん……妻には内緒。絶対にバレないようにする。今の僕にはこれしか楽しみがないから」
出会い系サイト(ミントC!Jメール)で知り合った女性と目下不倫中。きっかけは妻がこっそりと韓流アイドルのコンサートに行ったことだ。コンサートに行ったことは、ゴミ箱に捨ててあったチケットの半券を見て知った。妻は僕に何も言わなかった。そのアイドルと深い仲になることはありえないとは言え、それは浮気にほかならないと考えた。
(僕もこっそり楽しんでやる)
妻に内緒で出会い系サイトに登録し、女を探した。
知り合ったのは35歳の保育士。彼女も夫持ちで、いわゆるW不倫となる。ちょっとだけ交際して別れようと思っていたのだが、不倫セックスにハマってしまい、抜け出せないままずるずると関係を続けている。こうなったら覚悟を決めるしかないと、冒頭のような誓約を彼女と交わし、長期交際を決めた。
その不倫は、今の僕にとって唯一の楽しみになっている。
明日への活力とでも言おうか。彼女のぷりっとした肉体は、仕事と家庭の疲れをいやしてくれる。
僕の職場にもW不倫を楽しんでいるカップルがいる。営業第三課のA男と人事課のB子だ。二人は同期で独身時代に噂があったが、結局たがいに別人と結婚した。だが本当は惹かれあっていたのだろう。最近二人がラブホテルに入るのを見たという人がいる。薄暗い街灯の下にいた二人は満たされた顔をしていたらしい。
互いに守るべき家庭を持っていて、かつ外で性の快楽を楽しむ。理想といえば理想だ。片方が独身だともつれる危険もあるが、その意味でW不倫は安定している。
僕の場合もそうだ。彼女も割り切っているし、離婚する気はないと言うし、もつれることはない。互いに気をつけてルールを守っていさえすれば配偶者にバレることもなく、長期間不倫セックスを楽しめること請け合いだ。
妻に内緒のその行為は、やや罪悪感があるものの、生きる活力になっている。明日もまたがんばろうと思う。
妻が最近妙なことを言った。
「韓流アイドルのコンサートに行ってみたいな」
すでに行っているくせに何を言う。
やっぱり夫に隠し事をしたくないと思ったのだろう。
「行けば……たまには羽を伸ばさないと」
と言ってあげる。
だが僕は隠し事をする。
「出会い系で不倫したいな」
なんて口が裂けても言えない。